夜想曲
まどろむ海月


                         

瞑目の底をたどって
あなたの曲線を手にする
幾夜を重ねたその痛みの行為に
暗譜されたさざなみ

レントよりもなおゆっくりと
アップネーメント(次第に静まって)
ペダルにきらめく面影
スカートの微かな揺らぎ
なだらかな甘い起伏
シーツをうねるしなやかな白
たおやかにかすれる吐息
やさしく潤んだ脈動
そして
ひそやかに去っていく足音

ピアノの蓋を閉ざし
私の至福はこんなにも苦しい
幾重もの硝子を封印し
鎮めるものをさらに鎮め
星々の遠さを仰ぐ








自由詩 夜想曲 Copyright まどろむ海月 2006-08-31 20:21:34
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