空路
霜天

けれども
遠い場所へと離れていった
あの人はいつも笑っていたはずなので
それだけを支えとして立ち並ぶこの街は
寄り添うには頼りない爪先でしょうか

高い高い都会の空は見えますか
私を繰り返す証明書の中には
どれだけの私が存在しているのか
通過しているのかも分からなくなるので
認識してもらえる間は
遠い願いを繋ぎとめておこうと


行きかう人の表情を
どれだけ覚えていられるか
すれ違い、泣いていた人の数だけ
素直な言葉を探せる気がするから


いつも独り善がりな涙のせいで
この空は上手く回っていけないらしい
はみ出した部分を大事そうに抱えて
いつか何かを捨てなければならないとしたら


その日がきたら


まだ遠い私を数えて
行く空の色を考えて
いつか、遠い場所へと辿り着けたら
好きだった珈琲でとりあえず乾杯をして


自由詩 空路 Copyright 霜天 2006-08-30 02:14:04
notebook Home 戻る