コスモス堤防
蒼木りん
コスモス堤防を知っていますか
私の生まれた町は
祭りの仕方も変わってしまって
花火大会もなくなりました
予算がないんです
恐ろしく反り立つ
あの川の堤防は
落ちたら死にます
生まれた町だから
知っている人が多すぎるんです
お面をつけて歩けたらいいのに
まだ子どもだった頃に
憧れた人はもう
この町には
住んでいないのかな
学校祭の体育館を彩る
絵画コンクール
金紙の賞
銀紙の賞
私は二回きり
一人一本づつの
コスモス堤防は
三年ぐらいでやらなくなりました
事情は
だいたいわかります
返れない昔と
進めないあした
萎んでゆく夏
秋が来るのを
じっと待っている
それより
次の休みまでを数えるような
秋らしい服って
どんなだろう
コスモスみたいな風が吹いてる
子ども時代なんて
振り返らない
そんな
逃げるように
消えた人だっているし
初恋の人の帰り道
コスモスのつづく堤防と
ローカル線の鉄橋と
「あれが安達太良山」
水彩画道具持って
描きに行くのがゆめ
今は叶わないから