クローゼ
からふ
たまねぎを剥く事くらいに
泣くのは簡単だと言うクローゼ
とても静かに
自分の作った暗喩を慰めている
すり減ったローファーを履いて
路地裏でメントスを噛むクローゼ
クローゼのメントスは
いつだってドラッグストアの匂いがする
溶けたらまた指でもてあそんで口に入れる
たまねぎを剥きすぎて
まな板の上には何もなくって
泣けないクローゼ
さらけ出されたものが
そうっと転がっている、それは
もはやたまねぎでは無かった
自転車に乗っているクローゼ
また薬指をなくしている
それでも暗喩ばかりを撫でていて
足下は見ようともしない
夕暮れが目にしみる
もうすぐ泣けそうだ
怒ったように笑うクローゼ
嫌いなタバコを吸うクローゼ
手の甲が綺麗なクローゼ
好きな子に意地悪をするクローゼ
きみは影絵みたく素敵だ