クローゼ
からふ

たまねぎを剥く事くらいに
泣くのは簡単だと言うクローゼ
とても静かに
自分の作った暗喩を慰めている



すり減ったローファーを履いて
路地裏でメントスを噛むクローゼ
クローゼのメントスは
いつだってドラッグストアの匂いがする
溶けたらまた指でもてあそんで口に入れる



たまねぎを剥きすぎて
まな板の上には何もなくって
泣けないクローゼ
さらけ出されたものが
そうっと転がっている、それは
もはやたまねぎでは無かった



自転車に乗っているクローゼ
また薬指をなくしている
それでも暗喩ばかりを撫でていて
足下は見ようともしない



夕暮れが目にしみる
もうすぐ泣けそうだ



怒ったように笑うクローゼ
嫌いなタバコを吸うクローゼ
手の甲が綺麗なクローゼ
好きな子に意地悪をするクローゼ
きみは影絵みたく素敵だ


自由詩 クローゼ Copyright からふ 2004-03-07 00:04:18
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