同じ高さで反転する昼下がり
夕凪ここあ

窓を開けると庭でねこじゃらしが揺れて
通り過ぎてきた時間を優しく撫でていく風
いつの間に同じ高さから空を見れなくなったか
なんて もう思い出せないほど遠くに流されて

昨日思い出に留まっていた公園がもう
使い古された落書き帳の一ページに
色あせて消えかけて残るだけ
色鉛筆で塗られたその色が本当かどうかなんて
わからないコンクリートの下
いつまでも忘れられてく

私たちの夏の日は 反転していく
ゆっくりと呼吸よりも静かに
いくら気づかないことを悔やんでも
空が夕暮れるスピードで
大人へと向かってしまう

二階の高さからシャボン玉を飛ばして
弾けることが綺麗だと感じて
これ以上の階段は知らない場所に通じているようで 夕方
かくれんぼをして一人ぼっちに泣きじゃくった夏の日
隣でねこじゃらしの優しい毛先が同じ目線で
風の行方を追っていてそれを捕まえようと手を伸ばしても
永遠に近い場所へは決して繋がっていなかった
また、反転していく

昼下がり横になってそんな夢を見ていると
夏の終わりに吹くような淡い風が頬を撫でて
窓の外では一面のねこじゃらしが一斉に
風の向かう場所を指差した
部屋の中に何か懐かしい香りが広がって
何か思い出せないまま
やがて消えた


自由詩 同じ高さで反転する昼下がり Copyright 夕凪ここあ 2006-08-24 15:10:45
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