檸檬色の夏
佐野権太
ばっさり斬り落とした短い髪に
唖然とたたずむ
(なんか、めんどくさくって
照れたように君が笑う
右の頬を隠して
僕の知らない君の夏
正しい折れ曲がり方なんて
よく分からないけどさ
たぶん君のは、けっこう
いけてると思うよ
(似合うか、な
なんて、控えめなとこも
こぼれたシャギーの隙間から
悪戯っぽく睨むとこも
らしくって、さ
擦り抜けた、風
青い檸檬
よく、似合ってるよ
哀しいくらい
もうすっかり傾いた空を仰いで
(まぶしい、ね
なんて
むりやり目頭を押さえる君が
何だか苦しくってさ
僕じゃダメかな
なんて描いて
あたふた消しゴムで消してたら
君は、とっくにいなくて
思い出したように
蝉がしぐれて
透明な脱け殻、ひとつ
拾った気がした
君の知らない
僕の夏