夏だった
A道化




すう…、と
夏が引いてゆくにつれ
風に乾いた砂が
自ら風になる
砂に埋められていた
右の素足と左の素足が
柔らかに打ち明けられるのは一瞬
直ちに、衣服へ、衣服へと仕舞われ


その一瞬を
ただひとり
感受したはず私でさえ
熱く濡れた砂の中、ええ、確かに
確かに夏だったはずの私を
今はもう
あのひと、と
呼んでしまう


2006.8.23.


自由詩 夏だった Copyright A道化 2006-08-23 16:36:09
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