逆光の巨人
まどろむ海月

    





空間が歪んでいる
時間が熔けて耳から流れ出る
血と肉片の雨に刻印された地に生えた
悲願の樹の歌を聞く者がいない

欲望の風が吹きすさび翼は折れそうだ
叡智の胎の中で
光の卵は空しく数を減らし続けるが
伴侶も安らぎの城も
見つからない

丹念に耕された地は
無残に切り裂かれ
せわしない騒音のなか
目も耳もない虫たちが這いまわる
憎悪する腐臭が漂い
精緻な思索は糞土に埋もれ
そこに共食いの神が屹立している
言葉も理性も道具に過ぎない



徒労の矢に悲しく射抜かれて
疲労の海に沈んだ巨人は
影なのか実体なのか
逆光が眩しくて
さだかには
見えない





       








自由詩 逆光の巨人 Copyright まどろむ海月 2006-08-21 13:53:45
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