そして幾つもの夜が過ぎ
atsuchan69
肉の奪い合い
ひっぱりあい、
女の奪い合い
殺しあう日々が
だんだん
つまらなくなってきて、
//夜
まっくらな空にうかぶ星たち
真夜中に村へもどると、
族長からの使者
兄のデビルが家の入り口で立っていた
占い師の託宣――
「おまえは死ななければならない
と言う、
「おまえが死ななければ、
我が部族は、ひとり残らず滅ぶだろう
そして
突然、
襲いかかってきた
血を
分けた
兄弟を
殺し、
馬にのせて運ぶと
谷底へ 屍を
投げ落とし
言い知れぬ気配のなか
風が吹きぬけて
額の汗をぬぐった
哀しい朝が
はじめて私の胸に 罪を抱かせた
私は泣き、草原をジャッカルのように
遠くどこまでもどこまでも走りつづけた )))
。
☆*:.。
。:*☆
★
//夜
//そして幾つもの夜が過ぎ
海辺の村も かしこも
肉の奪い合い
ひっぱりあい、
女の奪い合い
どこも皆同じ
ころしあう日々が
今日もつづいている
私は彷徨い
旅の部族と知り合うと
駱駝にのって
荒々しく
スパイシーな風に 漂う
海と大地を往きめぐる者となった
派手な衣服と
陽気で狡猾な商売 )))
航海と貿易の技術を身のつけ
星のしるしと予知
算術や様々な民のことば
医学や科学、社会学も学んだ
そのうち儲けた金銀とひきかえに
頭巾のある、
黒い荒布をまとった女
――ひとりの魔術師を買い、
側近の一人として傍においた
彼女は賢く、
音楽という愉しみ
料理、ふたつの魂がひとつになる法
そして何よりも、
「愛」というまじないを教えてくれた
いつしか私は千の部族を率いていた
//そして幾つもの 夜が過ぎ
谷底に花束を落とし、
弔う私の傍らに魔術師もいた
村へもどると、
すでに使いの者たちが
貢物を運び入れ
めずらしい衣服や食べ物の匂い
寄ってたかる者たち
その奥に母がいた――
彼女は導かれるように
こちらを向いて立ちあがり、
「よくぞ無事で戻りました
私を抱きよせるように
両手をまえに出し
私が行くと
たちまち、
声を上げて
泣いた//
やがて年老いた族長は高座から降り立ち、
「さて、
呪われた息子よ、
汝が放った力のまえに
運命はいとも容易く敗れ去った
その力の源とは何であろう?
と、尋ねた‥‥
私は言った、
「占いをけして信じないことです
口寄せのことばより、
まず自分とその家族のことば
生きる者たちの声に耳を傾けます
人々の安らかな笑み、
子どもたちの無邪気に遊ぶ声と
女たちのつくる数々の皿に並んだ手料理
それこそが力の源に他なりません!
力とは、
かよわく儚い夢のひとつひとつです
ただその無数のつみ重ねによって
じつに強力なパワーが生まれます
それらを繋ぎとめるのは、信頼‥‥そして家族です
傍らに立つ魔術師が
頭巾の覆いをはずした
美しいブロンドの巻き髪を
かきわけるしぐさと香り立つ花の匂い
彼女の身分は
もはや奴隷ではなかった
そう、私の妻である
+。.:*・゜★