薬指の約束
海月

煙草の味は未だに知らない
隣で君が吸っていても欲しがる訳でもなく
火が消えるのをゆっくりと見つめていた
煙を纏い切ない横顔を抱きしめたら
それはガラス細工の様に壊れてしまいそう

裸体を見せ付けあい
欲望のなすがままに貪り合い
喉の渇きを潤すかに最後の雫を飲み干す
シャワーからは砂が流れ落ち
頬に絡まり小さな涙みたいに零れた

満足したのだろうか?

これが最後の愛だとしても後悔しないだろうか?
君のいない部屋で独り温もりに縋り付く
指輪の冷たさだけが心を支える
未だに外さない薬指の約束

この部屋からの夜景も今夜で最後になるだろう
ネオンライトがチカチカと点滅を繰り返して
僕を送るには多少派手なのかもしれない
もう少しだけ静かなら止めたのかもしれない

朝露が窓について「さよなら」と書き
眠る君の横顔に最後のキスをして

いってきます

薬指の指輪を添えて...


自由詩 薬指の約束 Copyright 海月 2006-08-18 13:04:26
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