スローモーション
霜天

夏祭りの音の屋根
迫り出した空のかけらは
まだ遠い、午後の私へと溶けていった
古い夢の神社の石段を
ひとつ飛ばしで駆け上がれば
頼りない心音のままで
私はきっと、そこにいる

夏の夕暮れのやさしさを
今も確かに覚えている
音の染み込む街の隙間に
待ち続けていたものは
私のどこへ帰るのだろう
短い言葉の切れ端だけを持って
朝には珈琲を飲み、窓から飛び出していく
繋ぎ止めたい、私は
そこに居続けることはない、だろうから


永遠、という言葉を誰も知らないのに
永遠という言葉がよく似合った空だった
そこに行きたいと強く、思う
夏祭りの声と、声
光の届かない部屋で
泣き続けるには、軽すぎた
昨日が昨日でなくなると
明日が少しずつ遠くなっていく
引き伸ばされた言葉の端が
とても心地よい、温度になっていく


もし、明日になれたら
あの神社の石段に座る
誰かの手を繋いでみたい
もし、明日になれたなら
いつかの私が、どこかにいるから
繋ぎ合わせて目を閉じた

遠く夏祭りの音の屋根
夏を飛び越えて着地する、と
景色はゆっくりと落下していく


自由詩 スローモーション Copyright 霜天 2006-08-16 01:34:09
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