流れる星のサーカス 13
あおば


画家ルオーの缶詰を賢人ピタゴラスに贈ったら
開け方が分からないから
サンダルで踏みつけて
ブリキの角で足の裏を痛めて
顔を顰めて
なんだこいつと
敵のような顔をして
踵で蹴られて
溝に落ちて
それから

再発見されたのが
20世紀の中頃
モーターバイクが普及して
サンダル履きでも走れます
常識外れが流行して
道交法の不備を突かれ
事故続出
交通指導の警官が
足下を気にして
速度違反を見逃したり
一時停止違反を見逃したり
サンダル履きの女子高生を見つけては
危ないから革靴を履きなさい
ヘルメットを被った方が安全ですよと
口をそろえて説得したが
メットは格好悪いから
革靴は革が傷むから
ビーチサンダルで
海に向かうのです
原付バイクの二人乗りは
禁止されてますから
わたしたち
それぞれが自由に
アクセルを回します
走るんです
走るのです
信号無視は致しません
川を渡って
橋を渡って
砂浜に向かうのです

美術の先生に
油絵を勧められ
道具一式買いました
油の缶をぶら下げて
イーゼル畳んで荷台に載せて
立葵の咲く浜へ
イーゼル片手に
歩くのです
イーゼル片手に
走るのです
風が凪いだら
泳ぐのです
陽に焼けて
赤くなっても
我慢して
夕方には
イーゼル片手に
戻るのです
バイクの荷台に
赤い陽も乗せて
二人で一緒に帰るのです
ハミングする
2台のエンジンの音は
何時までも聞こえます
何処へ行っても
付いてきて
磨り減ることのない
ハミングバードの靴磨き
サンダル履いた
昔日の追憶の描く作品が
イーゼル片手に
ハミングしながら
走るのです




自由詩 流れる星のサーカス 13 Copyright あおば 2006-08-13 00:27:14
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モーターサイクル(バイク)