淋しさの周波数80.6kHz
mamei
一人の夜に赤々と土気色を二時の方向に指す赤月
温水プールが街に広がる午後八時の暗闇の渦に吐き気がする
空気 まどろむ 夜だ
安心した素麺のつるっとした喉越しと
果てしなく続くテレビの中の光に 吸い込まれそうになりながら
ああ、今日は原爆が落ちた日なんだ、なんて果てしなく遠い昔の話のように、
自分とはかけ離れた全く関係ない話のように、
取るに足らない情報を集めて
面白いことないかなーなんてぼんやりして本を開いたり、映画を見ようと思ったりする
夏のこの時期になると夏の終わりを思わずにはいられず
焦燥感がうねうねと穏やかな夜の波のようにやってきては私を追い越して
どこか地平線の先の地獄の最果てに続いてそうな渦潮の中へ連れて行くのだ
淋しくなんかないよ、とつぶやいてみる
それはあまりに陳腐でちっぽけでのどを乾かせるほど 甘ったるい言葉だ
父母姉弟妹の家族がバス停で並んで月を眺めていた
あまりに父親が強くたくましく見えた
扇風機の無限に飲み込まれそうになって眠った
何回もめぐりめぐって真ん中にエネルギーを溜め込みそれを私に向けてくる
なんでもない
ただの風だ
風が 強い
頭だけ渦潮に巻き込まれて眠くなった
淋しくないよ、ともう一度つぶやいたら
あまりの簡単さに笑ってしまった
豆乳の紅茶が甘ったるく
それでいて健康的で偏りのない、偽りのないような、
馬鹿みたいな味がしたので
それが好きで、残った紙パックの中の空気まで吸ってみた