未知への遊撃
atsuchan69
曇天の空に轟音がこだまし、
先に飛び立つジェットの一機
また一機と つづく滑走路の直線
野蛮な匂いの染みついたコクピットに座り、
操縦桿をにぎる僕は ひとり
密かに「裏切り」を抱いて。
ひと通りの操作の後、たちまち加速し
焔を噴いた機体が 大地の拘束をやぶり
あっという間に到達する 静けさの宙
//群れを離れて 星に届こう――
無線を切り、わずか数分で首都圏に到達した
眼下に見えるのは、無数の墓石の建ちならぶ 東京
すこし高度を下げて 高速道に沿って飛行する
臨海コンビナートまで あと僅か
( とても簡単なことなんだ、
( 死んだら、お星様になるのかな?
僕の死によって、政府はきっと
さらに高い値段で石油を買わねばならない
「日本経済は、ひょっとすると
機能を止めるかもしれないナ
たぶん僕の名は 歴史に残るのだろう
もちろん、アンチヒーローとしてだ
//報道関係者諸君、どうか理由は聞かないで欲しい
まったく答えられないから。
僕は空っぽのアタマで
たった今、堕ちるまえに
――懸命にそれを考えている最中なんだ
しかしそのとき、緊急脱出装置に手が触れた
いっきに空高く放り出された後、花開く 落下傘
真下には すでに地獄絵がひろがり、
僕にはそれが とても現実だとは思えない))