堕在・黄色い壁の家
銀猫


水鏡の裏側からわたしは見ている

黄色い土壁と
くすんだ緑の屋根を
潅木の足元に散り落つ白薔薇を


誰かの足音は
水面に波紋を広げるのだが
雨のひと粒ほどに
まるく響きはしない

苔や濡れた髪のような水草の茂る
豊かな池は
すこしぬるく
剥がれた鱗に優しい

ここに泳いでいると
時は留まり
木の葉の色合いだけが
季節の知らせを届ける


水鏡の奥からわたしは見ている

動かぬ黄色の壁と
明暗に忙しい空とを対比して
暦を数えることもなく
揺れる水面を見上げている


あなたは
時折、水の表を切る背びれを
憐れと呼ぶのだろうか




自由詩 堕在・黄色い壁の家 Copyright 銀猫 2006-08-08 19:40:03
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