赤い車いす
かのこ

よく晴れた日 五月
赤い車いすの 青年
「コンニチハ」、と
片手を上手にあげて
僕に挨拶してくれた

横断歩道 信号の青は
鮮やか過ぎた 心
渡っていく 盲導犬
みぎヒダリ、確認したらば
手を引いて 導いて 僕を
導いて

骨の見える 足首
鉄のように 強く
太陽の光もはね返す
熱を帯びた 
赤錆

可愛い 可愛い
君もほんとうは
人懐っこい仔犬
僕の足をあげるから
こっちへおいで

空の青には 高らかに響く
赤いサイレン 赤い車いすの
車輪の軋む音 仔犬の鳴き声


自由詩 赤い車いす Copyright かのこ 2006-08-07 17:09:23
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