ランパルトの盲雨 懐中日記より
木賊ゾク
「喫茶店にて 私も理解できぬ他人との会話に関する考察。」
そんなに悲しい歌を詠んでばっかりじゃ、誰にも評価されないよ。
いいんだ、俺は自分と踊れれば。
おまえは最近そればっかりだからな、紗夜だの副人格だの、
わからんよ、君には。
まぁ、耽美主義者や厭世主義者気取りは良いけどさ、そんな詩を誰にあげるんだい?
紗夜だよ。
またそれか。ったくな、紗夜ってだれだよ?
黒髪の少女。
ロリコンか、おまえは、まぁいいけどさ、今度はもっとまともな詩を書いて来いよな。
喫茶店を出て僕らは逆方向に歩き始める
雑踏が灰色を巻いて、あばずれを掻き混ぜる
あぁ、なのに孤独はすぐそばで吼えている
ざわめきの縁にそっと斜線を入れて静けさをまとう
こんな雨のような音の多い日に無音を感じると
人混みの向こうに紗夜が黒い傘を持って佇んでいる
崩れ落ちる鼓動を押さえて、ビルの臭いは忘れられぬ
雨が降らないか、紗夜、俺はいったい雨が好きなのだ
人だまりを介して、小さい貴方と並んで歩く
子供時代の未練は僕を残したまま、紗夜を思い
俺を呼ぶようになったこの東京を雨に落としたい
かさはあるよ、ここにいるよ、
ふたり、そろりと、この世、おわりで、
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懐中日記