ランパルトの盲雨            懐中日記より
木賊ゾク








     「喫茶店にて 私も理解できぬ他人との会話に関する考察。」








そんなに悲しい歌を詠んでばっかりじゃ、誰にも評価されないよ。






               いいんだ、俺は自分と踊れれば。







おまえは最近そればっかりだからな、紗夜だの副人格だの、





               わからんよ、君には。







まぁ、耽美主義者や厭世主義者気取りは良いけどさ、そんな詩を誰にあげるんだい?





               紗夜だよ。






またそれか。ったくな、紗夜ってだれだよ?





               黒髪の少女。






ロリコンか、おまえは、まぁいいけどさ、今度はもっとまともな詩を書いて来いよな。










         喫茶店を出て僕らは逆方向に歩き始める
         雑踏が灰色を巻いて、あばずれを掻き混ぜる
         あぁ、なのに孤独はすぐそばで吼えている




         ざわめきの縁にそっと斜線を入れて静けさをまとう
         こんな雨のような音の多い日に無音を感じると
         人混みの向こうに紗夜が黒い傘を持って佇んでいる




         崩れ落ちる鼓動を押さえて、ビルの臭いは忘れられぬ
         雨が降らないか、紗夜、俺はいったい雨が好きなのだ
         人だまりを介して、小さい貴方と並んで歩く




         子供時代の未練は僕を残したまま、紗夜を思い
         俺を呼ぶようになったこの東京を雨に落としたい




         かさはあるよ、ここにいるよ、





         ふたり、そろりと、この世、おわりで、

         


未詩・独白 ランパルトの盲雨            懐中日記より Copyright 木賊ゾク 2006-08-03 22:19:39
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