星を拾う
黒田康之

小さな手は星を拾った
大気の熱に
輝きは奪われ
小さな
つやつやと光る
黒い
石になったその星は
小さな手に載せられて
女と一緒に街を歩いた

街は赤紫の夕景を傾かせて
女の歩みを導いてゆく

はるか上空から落ちてきた星は
誰も殺さずに小さな黒い石になった

女は小高い丘の上にある家に向かう途上で
小さな星を放り捨てた
星はかつての何十億分の一の軌跡を描いて
草むらの中にコトリと落ちた

女は家のドアを開けた
どこまでいっても半生でしかない人生が
女の細い肩には詰まっていて
星の重みはその半生の群れたちに
微かな痛みを加えていた

聡明でもなく
純情でもない女の
うら若い痛みになって
星はその生涯を終えた



自由詩 星を拾う Copyright 黒田康之 2006-08-03 12:33:52
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