プロペラ風車が小さくなって
ブルース瀬戸内

まもなく船が出航します。

情熱や倒錯を積み込んで
まもなく船が出航します。

気概や理念を飲み込んで
まもなく船が出航します。

海に連続する川から
まもなく船が出航します。


川の向こう岸に
三本の羽で稼動するプロペラ風車が見えます。

300世帯の年間電力をまかなう風車の羽が
順番に天を指して、地を指して、また天を指して
ゆっくり、ゆっくり回っています。


まもなく船が出航します。

私は船に乗って
プロペラ風車をじっと見ます。

順番に天を指して、地を指して、また天を指して
ゆっくり、ゆっくり回っています。


少し、波が荒くなってきます。
少し、船が左右に揺れます。


かわいらしい霧笛が鳴って
船が出航します。

私は
プロペラ風車をじっと見ます。

なんだかこちらに
風を送ってくれているように感じます。

風車の回転速度に合わせて
船がスピードを上げているようにも感じます。
たくさんのものを抱え込みすぎて
上手く加速できないのかもしれません。


風車が小さくなっていきます。

風車が小さくなっていきます。

海が大きくなっていきます。

船が、ゆっくり加速していきます。


自由詩 プロペラ風車が小さくなって Copyright ブルース瀬戸内 2006-08-01 02:05:23
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