【短歌祭参加作品】ゆめのなかのこいびとたち
ピッピ

夏をつれてくる妖精がいないから冷やし中華を初められない


泣きながら闇夜に響く帰り足コンクリートはプールの青み


ウェディングドレスの中で夏に埋む指の日灼けを抱いて遠くへ


もう蛇と同じくらいの長さだね墓地の隣に住む君の舌


温泉のあの時あたし同性も好きなんだって水風呂の中


白夜だね、指差せば昼間の陽はゆれて世界がなくなる前兆のように


逃げているのか逃げられているのか風を知らない蚊帳のしずけさ


youのbe動詞を忘れていつまでも冷凍都市の手を離せない


太陽の周りを回る惑星のように海岸沿いはまぶしく


雲に乗ってバルブ回せばさあ、僕ら濡れれば弱る夕立の奴隷


白桃を剥けばあの娘の真白いリコーダを吹く僕がうまれる


あの花火は何座、あの花火は何座ってもう戻らない星座はつづく


真夜中に老人ホームに向かうバスたましいなんかを黙って見てる


当たり前に海のある風景の中で半裸の君と全裸の僕と


ピストルが二回鳴ってた、さあ行こう足跡のまだない街角へ


夜に食うすいかの種を弾く爪も離れた時間知っていたんだ


祝いたい今年も夏が来たことを 直立の僕らに日光を燃やし


フィラメントはくはじけて夏は夢 醒めても夢はつづく、と云った




短歌 【短歌祭参加作品】ゆめのなかのこいびとたち Copyright ピッピ 2006-07-28 20:36:30縦
notebook Home
この文書は以下の文書グループに登録されています。
短歌祭参加作品(ピッピ)