雨の日だから会えた人
月山一天


最近、雨が降ってばっかりなので憂鬱でしたが、今日は結構良い事があって嬉しかったのでここで、ひそかに綴っておこう。たまには雨にも打たれるべきです。

今日、仕事からの帰り、いきなりもの凄い豪雨が襲って来た。傘をもって来るのを忘れた私は、とっさに見知らぬ家の玄関先に突っ込んだ。
10程しただろうか、後ろからいきなり声がしたので振り返ると、感じの良さそうなおばあさんが微笑みながら、「この雨、なかなかやみませんやろ?どうぞ中に入って休んで行ってください」と言う。私はさすがに他人の家にお邪魔になるのは悪いので、大丈夫です、お気になさらないで下さいと何度も言うのだが、どうしてもおばあさんは私に中に入れと言う。そこまで言われて入るわけにも行かず、躊躇しながら渋々中へ進んだ。
家の中はと言うと、雨だからか薄暗く昼なのに蛍光灯がついている。古い作りだが昔の母の家を連想させるのか、なぜか心地が良い。
おばあちゃんは、軽く世間話をしながら「暑いでしょう。」と言って扇風機をわざわざこちらに向けてくれる。家の若い人達はみな外に仕事に出ていていないのだと言う。始めは、ぎこちなくただ、そわそわしていたが、だんだんと自分の置かれている不思議な状況が面白く思えて来た。
それからは、おばあさんが出してくれた麦茶とプリンを食べながら、色んな話をした。おばあさんの人生は決して楽ではなかったようで、旦那さんが亡くなってからはとても苦労したらしい。
私は私でいつもは言わないような家庭の事や、仕事で今自分が置かれている状況等を話す。こうゆう事は何故か、見知らぬ人の方が話しやすかったりするのだ。

それもそう、この薄暗い部屋を出たらもう一生会わないだろう人。
でもこの人には人生があり、生活があり、
色々考える事もあり、感じる事もある。
この現実はとてもリアルで、それでいて非現実な世界。
全てが計算外、予定外、予想外の世界。

でも何故かうれしかった。
この人に会えて。
この人のことを少し知る事が出来て。

30分程しただろうか、雨がやみ
私は礼を言って外に出た。

夕焼けにドップリ浸かったそこは、毎日通勤している見慣れた道だった。
その脇には家々が連なり、取り残されたであろう洗濯物が揺れている。
そこには、今まで気にも留めなかった人々の風景があった。

たまには、雨宿りなんて物をしてみるべきである。

おばあちゃん、本当にありがとう。
お元気で!







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お久しぶりです。。。戻ってきました。
色んな事がありましたが、また詩を書こうと思います。
宜しくお願い致します。


散文(批評随筆小説等) 雨の日だから会えた人 Copyright 月山一天 2006-07-26 10:44:47
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