【短歌祭参加作品】団扇あおいで、忘れない夏
逢坂桜
冬の頃 テレビで見つけた温泉に
夏に来たのは 僕一人だけ
この夏の 打ち上げ花火 忘れない
初めて君と つないだ手とね
待っていた 暑中見舞いの返事には
「海に来てます」 それだけですか?
蚊帳の外 薄闇のむこう 白い足
我知らぬまま 恋のはじまり
盆の夜 「しめくくりには これだよね」
線香花火を みなに手渡す
言えなくて 蚊取り線香 仕掛けたよ
朝、見てくれる? 「すきよ」の文字を
蚊取り線香に鉛筆でなにか書くと、灰に残ってしまう・・・
といういたずらがあったと思います。
やってないんで、うろおぼえです。
夏の夜 流星群を 待ちわびて
眠い目こする 兄と弟
カルピスは 見あきましたよ お中元
夏が来るたび 飲みたくなるけど
8月に 宿題ためこみ ゆるむ頬
終わる休みと会えるよろこび
あの夏の 金魚すくいの出目金は
いまも元気よ あなたは元気?
風鈴の 澄んだ音色に 足、止まる
たまには実家に 電話するかな
クーラーの 電源入れる、より早く
扇風機まわす きみがすきだよ
引っ張り出す スクール水着 あててみて
ため息ついた プール前日
夏の午後 急な夕立 走りかけ
「たまにはいいか」 髪かきあげる
体育の後 「暑いから」なんて一言で
半裸になる君 どうすればいい?
「初恋は すいかのようね」 種をとる
大事に包まれ 甘くてもろい
新築の マンション建ってる あの場所は
いつかの夏の 秘密基地だね
涼しそう 選んだ映画は「冷凍都市」
通勤電車は ペンギンだらけ?
空と海 夏だけの青 誘ってる?
15歳なの 受験生なの