梅雨が明ける前に
蒸発王

【壱】

梅雨が開ける前に

雨の一本一本を捕えて
君に贈る
つけ睫毛を作りたい
雨の繊維は透明で見えないが
縁取られる君の瞳が
香り立つ水分で
もっと
いっそう
潤んで見えて

きっと
魅力的だ



【弐】

梅雨が明ける前に

空から地上へ飛び立つ
雨足に口付けしたい
落ちてくる雫ではなく
落ちている雫へ
滑らす様に唇を当てたい
涼やかに飛び立つ
雨の足に
ひざまづいて口付けがしたい

そう
君の足にそっくりなんだ



【参】

梅雨が開ける前に

雨音で話しがしたい
はたはたと
傘に跳ねる雨音が
とても可愛らしく
暴力的で
色っぽい
理想の言語だと思うから
雨音で君と喋りたくて
声帯を雨で潤す

世界のどこにいても
君と話しができるように



【四】

梅雨が明ける前に

君を迎えに行きたい
大きなコウモリをさして
其の黒い翼に乗り
吸血鬼のような
強い骨で
大風なんかに負けない
相合傘で
迎えに行くよ


だって

愛しているんだ



愛して
いるんだ







『梅雨が明ける前に』





自由詩 梅雨が明ける前に Copyright 蒸発王 2006-07-20 22:14:57
notebook Home