花一夜
結城 森士

両手の指と指の間から
音もなく零れ落ちた
赤い後悔
それらを また
両手で掬い上げようと
するのだけど
どうして
止め処なく 打ち寄せる嗚咽の波が
流れ落ちてまた僕は顔を歪めた

赤色の後悔は 地上に落ちると
黒ずんで固まり
固まった黒い執着心は
ドロドロに腐り
もう掬い上げたいとも思えずに
僕は何を意識するでもなく
その腐敗した精神を俯瞰していた

僕の血走った両眼から
黒い塊の上に
水が落ちる・・・
赤い花が一本 咲いていた

僕はその花に水をやった
水は僕の両手で注がれた

そして僕は
朝を向かえるまで
一人毛布に包まって
赤い花を眺めていた
七月の夜は雨すら黒かった


自由詩 花一夜 Copyright 結城 森士 2006-07-20 19:55:12
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