かぶとむし
maumi

ビルの前で飛ぶ甲殻虫
茶色い羽と足を広げ
その目に映る景色は
丸く歪んだ世界を映す

浮いてるように飛ぶ世界に
君の目でもいい
僕を映してくれはしないか

ショウウインドウの窓に
茶色い羽の甲殻虫
棘棘のイバラの足で
垂直に伸びたビルにしがみつく

何事もないように留まるそこに
美味しい蜜があるの?
僕にも飲ましてくれはしないか

僕は服を脱ぎ君に近づく
僕は髪を削ぎ君に近づく
僕は目を塗り潰し君に近づく
僕は言葉を失くし君に近づく

それが思い違いだとしても

君といっしょの空を飛べるなら
君といっしょの蜜を飲めるなら

あえて蝋の羽をつけて
君の傍らを飛んでいたい



未詩・独白 かぶとむし Copyright maumi 2006-07-20 00:25:19
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