体の暦
A道化








夜のアスファルトと
それに密着してゆく夏と雨とへ
車の落とす赤が付着しては
ひゅっ、と
離れてゆく一秒一秒、その風に
肌寒くなれる体の、少女である体の、わたしが
最初に深くうなずくとき
くちびると瞳の曖昧な位置づけが
既に胸まで達していた夏へ、浸る

高い位置で結わえていた髪を放とう
その髪の暗い水底で落とし物のように密かに火照る
くちびると瞳で、雨へ行こう
すべて濡れたって構わない、(何も濡れなくたって構わない)
固体、のち、液体の過程のように
快いときというものは必ず何かを諦めているものだから
永遠でなくたって構わない
液体、のち、
まもなくわたしは全身でひゅっと消えてそれ以降
ああ、それ以降こそ完全に快い、
(液体、のち、)気体であるわたしになって
(永遠だって、構わない)


2006.7.18.
※暦=(こよみ)


自由詩 体の暦 Copyright A道化 2006-07-18 22:27:49
notebook Home 戻る