ぼんやりカーニバル
ふもと 鈴

曲線を描く黒髪いつの間にけたたましく鳴る風平行線
太陽の光を点で結んでは指に集めて舐めいる残暑
白鳥の飛び立つ様を物語る神の白髪結えし因果と
草かげで鳴きあう猫に呼ばれてや境界不明の現実が減る
三日月が出るたび泣き出す少女からうさぎ死んだと哀しみ飛んだ
椿種転がる音に呼吸死ぬ手で拾ひたるはつまり恋種
ノクターン響け箱式ピアノ線二重写しの指の幾何学
緊張に耐えられないから一人また牢獄狂者の物まねに富む
唄による二人言に憧れて灰色少女モノトーンのいたずら
海鳥が失いし羽根四六十水面に水泡騒がしく鳴り
ぼんやりと輝けるでもない太陽に刹那主義者のよだれしたたる
カーテンの向こう側には薄紫触れる空気、流水のため
聴いていた蝶の羽音にさんさんと幻想粉の散布、劇場
距離のなき遠近法なき街の斜に乱反射する光の降下
土曜暮れ土曜暮れつと呪文する束の間疎き無意識老者
金色の尖塔立ちたる濃霧ゆくそのさきざきに迷える猿形
君と似た唄をうたひて昼下がり血の出ぬ体に祝杯せせらぎ
二十歳過ぎ果て果てはてなと口ごもり空気と共に消えゆる絶や
確証と頷くきみのその姿理性半分削る途中





短歌 ぼんやりカーニバル Copyright ふもと 鈴 2006-07-18 01:18:34
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