決裁
たもつ


飛び込むと
その先には砂漠が広がっていた
課長がいて
砂粒をひとつひとつ数えていた
課長
声をかけてみた
砂漠では名前で呼んでください
と言われたけれど
課長は課長だったので
知っているなかから
生まれて初めて覚えた名前で呼んだ
課長はにっこりと微笑み
僕の名前を読みながら
決裁にはんこを押してくれた
改めて聞くと
美しい名前だった
それから
今日の天気のことや
正しい魚の煮付けの作り方を
教えてくれた
僕が教えてあげられるものは
何も残ってないので
砂粒を数えるのを手伝った
暑いね、と汗を拭った
課長のハンカチの柄を
いつまでも忘れないようにした



自由詩 決裁 Copyright たもつ 2006-07-16 19:49:02
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