百日紅の下で
銀猫

ひとたびの雷鳴を合図に
夏は堰を切って
日向にまばゆく流れ込む

其処ここの屋根は銀灰色に眩しく反射して
昨日まで主役だった紫陽花は
向日葵の待ちわびていた陽射しに
少しずつ紫を忘れる


あれから幾夏が過ぎたのか
思い出せないくらい鮮やかに記憶は点在して
プールの塩素の匂いや
蝉の声に紛れて
あの日の恋心も影踏み鬼の役まわり

百日紅が赤い

真昼の濃い影を連れて
水玉模様の木漏れ日の道を歩くと
汗ばんだ手のひらばかりが思い出されて
今は昔語り

今年も百日紅 あかい

あかいね

赤い


自由詩 百日紅の下で Copyright 銀猫 2006-07-15 21:19:43
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