月のしずく
プル式

明け方の空は曇っているのに
あんまりにも透明なもので
まるで海の底のように感じました。

少し泳いでいくと
灰色の話を詰めて
銀色の魚が泳いでいくので
おはようと声をかけましたら
とても胡散臭そうに見つめ返されて
なんだか勿体無い気持ちになりました。

ただ一言のおはようという
行き場の無くなった言葉が
朝もやの中で漂っておりますので
自動販売機にあげるよというと
提灯鮟鱇の様にぺかぺかと点滅して
オハヨウと返事をくれました。

光の射してきた空を見上げると
雲の隙間からそっと
静かに月が覗いておりました。
朝焼けに妬かれた月は
少し青白く光っておりました。


自由詩 月のしずく Copyright プル式 2006-07-12 05:57:01
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