歩道橋
純太

春は渡るほどに
瞳で深呼吸をして
そして一方通行の追憶を
リバイバルで・・・

俺の家の近くにも そろそろ
更新の匂いがする歩道橋があり
その歩道橋の階段を登りきれば
少し歩いたあたりで
一味違う美景が見れるわけでもなく 
下を見れば 
後は人の頭の上を飛ぶことだけを背負った
車社会が見えるだけ

そしてその歩道橋の
雨の染みの乾きが遅くなった
べトンの階段に

たまにつまづく階段に

この春も
悲喜の回想が始まった

あの日 男と女は
狂乱しながら階段を登っていた
恨めしい涙声と怒声
どっちがどの声なんてより
二人登ってゆく様が
春雨だった

あの日 老夫婦が
階段を登ってきた道に立つ
眼下の孫へ別れの手を振り
階段を降り始めた

そして降りきった老夫婦を
追い越そうとした俺は 
老夫婦と眼を合わせたけども
俺に投げかけたわけではない
清々しい笑顔が
とても春風だった

陽光の暖かさが漲る
この季節が巡り来て
その歩道橋の階段を登る度
背中が見える向こうの階段から
その時一番会いたい人が
登ってきて欲しいと
殊に思うのだけど・・・

春は渡るほどに
眼で深呼吸をして
そして一方通行の追憶を
リバイバルで・・・


自由詩 歩道橋 Copyright 純太 2004-02-28 00:05:24
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