明日へ
服部 剛

夜が明けて 
窓から朝日が射し込むと 
目の前に 
猫背の暗い男が両腕をらし
立っていた 

「 私ハ生キル事ニ疲レタ 
  アナタノ生霊 
  アナタガ誰カト浮カレル時モ 
  何時イツモコノ部屋ノ隅デ膝ヲ抱エテ 
  座ッテイマス          」 

( 窓の外
( 木の枝から離れる枯葉 
( 一枚・・二枚・・と舞っていた

瞳のうるんだ弱気な男に近づいて 
肩にそっと手を置くと 
男は煙になって胸に入った 


日は暮れて 
真っ暗になった部屋のドアを開けると 
外には ただ 空白があり 
何も書かれていない一冊の本と 
表紙の上にはペンが置かれていた 

( 人知れず吹く
( 風のてのひらはペンを握り
( 筋書きの無い明日の物語をつづるだろう 

胸にそっと手を当てる 
弱気な男が震えている 
心臓の鼓動が早まる  

私は右手を固く握り 
ドアの向こうの空白に 

ゆっくり 足を 踏み入れる 












自由詩 明日へ Copyright 服部 剛 2006-07-09 21:16:03
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