明日へ
服部 剛
夜が明けて
窓から朝日が射し込むと
目の前に
猫背の暗い男が両腕を垂らし
立っていた
「 私ハ生キル事ニ疲レタ
アナタノ生霊
アナタガ誰カト浮カレル時モ
何時モコノ部屋ノ隅デ膝ヲ抱エテ
座ッテイマス 」
( 窓の外
( 木の枝から離れる枯葉
( 一枚・・二枚・・と舞っていた
瞳の潤んだ弱気な男に近づいて
肩にそっと手を置くと
男は煙になって胸に入った
日は暮れて
真っ暗になった部屋のドアを開けると
外には 只 空白があり
何も書かれていない一冊の本と
表紙の上にはペンが置かれていた
( 人知れず吹く
( 風の掌はペンを握り
( 筋書きの無い明日の物語を綴るだろう
胸にそっと手を当てる
弱気な男が震えている
心臓の鼓動が早まる
私は右手を固く握り
ドアの向こうの空白に
ゆっくり 足を 踏み入れる