【短歌祭参加作品】愛のない慈悲なんていらねえよ、夏
たたたろろろろ
「海まではあと2時間はかかるからスイッチをぜんぶOFFにしとくの」
扇風機だせば宇宙人がやってくる黒いかみのけ黄色いはだの
温泉は自宅の風呂とは違うからはだかの歌は真夏の空へ
蝶の瞳で線香花火を見ていなよ上や下から、真横からでも
知恵の輪が外れたような音がして金魚すくいの出店が燃える
「もう少し動かせばどう?ばかみたく蚊取り線香に酔っていないで」
夕立に洗われながら蛇を見る 愛するように恐れるように
風鈴の前でかたぐるまをすれば浴衣の少女は風をあやつる
「コンドームあれで満たしてめいっぱい。川ですいかを冷やしてる間に」
たくさんの女子が冷凍都市の中なけなしの美に毒を込めつつ
シニカルを噛みちぎったら とぶようにお中元を買いに外へ出よう
美しいものだけ見せていたいけど朝のビーチは雄弁な青
宿題がランドセル砲からとびだせば逆光に舞う夏のあれこれ
アイドルのよだれから成るきよらかな水が墓地では大安売りで
夏空の流星群がさりげなく殻を砕いて白身もきみも
うつくしくふけつなことをしていたら花火のおとに驚かされた
少女よ今、半裸で駅の前に立ち全ての線を受け入れる気か
蚊帳のなか誰に見つかることもなくみるみる悪くなってゆく飯
愛のない慈悲なんていらねえよ、夏(市民プールで潜水しながら)