In the rain
AKiHiCo

鈍色の空の下で腕を伸ばせば
あの栄光にも届く気がしました
太陽が隠れている今なら
大丈夫なのだと誰かが囁いたのです

遠く近くで零れ落ちる水滴を
振り払う事もせずに
ただ虚空の先を探していました
私の求めている未来が
そこに在るような気がしたからです

私の求めるもの私が欲しいもの
形も色もないものに憧れて
堕ちてくる空を掴むのです
握れば掌には何もなく
髪を滴る悲しみを拭えずまま
この場所に立ち尽くすしかありません

手に入れたいものがあるはずなのに
捕まえたはずなのに
そこには何一つなくて
私の心は虚像だったのでしょうか
頬を伝うのはあの日の憧れ

鈍色は果てしなく続く事はなく
私の栄光を崩す砂の城
地面に描いたあの頃の未来の私は
ここには居ないのです
楽をして手に入れた栄光は幻
降り頻る悲しみの中に煌く過去の

瞼を閉じてしまえばここは
あの頃に想像していた私になれます
抗うのも止めてしまえば
心はあの頃に還れるのです
太陽が目覚めるまでの幸福を

身体が濡れて空に指先から爪先まで
張り付く服はせめてもの抵抗
栄光を捨て去れない愚かな私の

陽射しが世界を照らせば
消えてしまう脆い祝福
いくら腕を伸ばしても祈りを捧げても
こんな私では何も掴めないのです
滲む愚かさだけをこの胸に



自由詩 In the rain Copyright AKiHiCo 2006-07-07 00:54:21
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