あ、じ、さ、い。
水在らあらあ
?.
ああ
オルテンシアがほんと楽しそうだ
あんなの日本語だとね、てんこ盛りって言うんだよ。
ひひ、てんこ盛りだって、おかしいね。
まあ、要するに、昨日の俺たちのパスタだ。あれが、
てんこ盛り。ひひひ。
いやほんとはね、あじさい、言ってみな。
あ、じ、さ、い。
俺には、あじさいは、母親なんだ、
母親の、思い出だ。
あ、じ、さ、い。
おまえには、どう感じるか、
言ってみな...。
あっ、ほら、ヤギがいるよ。なんてきれいな、
あれは、なんてきれいな、そら、緑の中、
傷ついたように、ところどころ青いぜ、うん、
見える、見えるよ、こっちからでも、もう言葉がない
だけだよ、あの、子ヤギが母ヤギのうしろに、
母ヤギの背筋が、ほら、背筋がすさまじいと思うよ
あんな背筋があればいいよもう……くそっ…。
俺もう、ワイン開けるよ。いや、
ちょっと開けてて、
俺チーズ切るから。
昨日工房で研いでおいたんだ
だからこのナイフ、今日は、
切れるぜ
?.
新月の夜
優しい魂は
もう
だめだって
もう
だめだって
私たちもうだめだって
新月の夜
優しい魂は
稲妻の中
もうだめだって
言うのです
?.
(紫陽花はいつでも俺の心に
実家の影を灯すから
この季節俺は情緒不安定で
おまえに当たったりして
ごめんな
本当
ここのは日本のよりももっとずっと色が濃くて
青でも赤でも紫でもピンクでも
とにかく濃くて
余計に俺はゆすぶられちまって
やられちまって
紫陽花はいつでも俺の心を
横浜方面にはじくから
こんな遠くから
横浜方面も何もないのにな
ごめんな
もう、
本当、)
?.
あれ、は、あじ、さいですか?
はい。
てんこ、もり、です、か?
ははは、そう。
あなたわ、あじさい、を、すき、ですか?
はい。
あじさい、わ、きれい、です。…か?
はい。
わたし、わ、あじさい、です、か?
……。
わたし、わ、あじさい、ない、です、か?
ああ、違うな。
わたし、わ、あなた、の、あじさい、ない、ですか?
ちがう。
わたし、わ、なに、ですか?
おまえは、どっちかっていえば、マグノリアだ。
…、おこてる、ですか?
怒ってないよ。
かなしい、ですか?
……。
おなか、すいた?
……。そうだな。もう帰ろうか。
おいしい、おにく、ですか?
…、そうしようか。
てんこ、もり、ですか?
…、そう、しようか。
―――高いスキップしておまえが
はねてゆくから
紫陽花とマグノリアの公園は
サン・セバスチァンでも
横浜でもないから