レストラン風景
肥前の旅人

                     こうず まさみ
1 地下
 大都会の地下街を
 ぼくと妻のふたりは歩いている
 その日は旅先からの帰りで
 空腹気味のぼくたちは
 地下二階の京風レストランに入る
   ここ 知っているわ。一度 来た  
   ことが あるの
 ほっとした表情で妻が語るものだから
 ぼくは理由もなく喜んでいた
 なにしろ 迷路のような地下街を
 滑らかなタイルの上を
 ぼくは ダサイと言われないように
 歩こうと努力していたからだ
   あなたの背中って 猫背なのね
 妻の鋭い指摘にもめげず
 見知らぬ男や女と
 何人すれ違っただろうか
 ここでは
 生きるとは
 固く唇を閉ざすことだ
 というような人たちを見送りながら
 疲れ切っていた  


自由詩 レストラン風景 Copyright 肥前の旅人 2004-02-26 16:27:20
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