もう一度、俺に夢を見せてくれ。
腰抜け若鶏

俺は今の現実をぶち壊したい。どこか別の世界へ抜け出したい。

少し前は抜け出す必要なんてなかった。
そこにいるだけで十分すぎるくらい満たされていた。
俺が望み、そして自力で手に入れた世界だった。

だが、それさえ永遠ではなかった。

今は違う。ここにいると満たされない。
ここにいるだけで不満だけが溜まっていく。
ぶち壊したい。抜け出したい。

でも、どうやって?一体どこへ?

希望が欲しい。
自分がこの現実をぶち壊す姿。
自分が別の世界で幸せに暮らす姿。
誰か、そんな希望を俺に見せてはくれないか?

どうやったらこの現実をぶち壊せる?
一体どんな世界へ行ったら幸せになれる?

どこへ行っても傲慢で我侭な人間達ばかり。
妬みと不満、嘘と欺瞞、裏切りと策略に溢れている。
仲間も恋人も家族も、上司に部下、お隣さんも。
最初はいいだろうさ、でもそれをずっと持続するのは?
誰にも文句を言われない絶対的権力。
それを手に入れるのはまるで雲を掴むような話で。

現実を見すぎたせいで、
潔癖と高尚を求めすぎたせいで俺は夢が見られなくなった。
くだらない夢でいい、馬鹿な夢、中身のない夢で何が悪い?
夢を見ている間、人はみんなワクワクウキウキしながら夢に向かって生きていける。

ところが、だ。
そんな夢見る人を見ると、気に食わないといい、馬鹿だといい、生意気だと言って潰しにかかる連中がいる。
自分の夢を比較して劣ってるだとか、自分には夢がまだないだとか、そんな理由で。
他人と比べて自分の夢が劣ってる?一体そんなの誰が決めた?
自分には夢がまだない?だったらなぜ探さない?
他人の夢を潰しても、何も生まれないのに。一時の自尊心の快楽。自分の存在への安心感。
そんなものに一体何の意味が?

一体どうすればいい?
そんな連中が大勢いるこの世界で、夢を見ながら生きていくだなんて。
誰か、俺にそんな生き方を示してくれ。
それが映画だったら公開初日に映画館へ行く。小説だったらその場で買う。
漫画だったら全巻揃える。

もう一度、俺に夢を見せてくれ。




散文(批評随筆小説等) もう一度、俺に夢を見せてくれ。 Copyright 腰抜け若鶏 2006-07-03 11:24:05
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