ジョニーのロックンロール
しゃしゃり
ジョニーは昔バンドをやっていた
ジョニーはギターでヴォーカル
音楽の才能は全くなかったが
どうしてもやると言ってきかなかったので
仕方がなく俺はベースをやり
アキラがドラムをやった
俺は素人に毛がはえた程度だったが
アキラはセミプロの腕前だった
ジョニーは要するに
女にモテたかっただけであり
しかしその情熱には目を見張るものもあった
俺たちは練習にあけくれた
アキラの本名は金ナンとかで
要するに在日何とか人だった
俺はじきにバンドの不調の原因とされ
クビになったが
特にくやしくもなかった
深夜にアキラとファミレスに行って
アキラの恋について話をきいた
アキラは女子高生とつきあっていて
すぐにでも結婚したいなんてことを言っていた
でも
それは
とてもアンフェアな結果になってしまった
女子高生の親父というのが
学校の先生のくせに
とてもとても
非常識なやつだった
俺は憤慨した
国籍がなんだというのだ
そんなものなんだというのだ
宇宙人でも
地底人でも
好きになったらなんだというのだ
俺が親父ならすぐに認める
そして娘を誇りに思うのに
そしてそういう曲を書いた
ジョニーのやつは
そろそろロックバンドに飽きはじめていた
だから俺の曲などすぐボツにして
そのくせパクって似たような曲をやった
でもそれは俺のよりいい曲だと思った
バンドはまもなく解散した
たった一度の解散ライブを
俺も見に行った
新しいベーシストもさえないやつだった
アキラのドラムだけが激しかった
ジョニーはあらゆる知り合いの女を呼んで
どれかひとりでも引っかからないかと
必死に声を張り上げたが
ライブの終わりに残っていたのは
俺と
例の女子高生のふたりだけだった