暗中
足立和夫

暗く輝く舗道に
群れるひとの息
灼熱から遠ざかるからだに
ひっぱられ
脇道にそれて
ひんやりする暗がりに
肩を入れる
夜に流れる
うすい闇は
底なしだ
ぼくは冷たい空気のなかを
ことさらゆっくり歩く
いつでも闇は
孤独を新しくして
逃れられない人生を
葬るようにみえる
呼吸が肺をぬけていく音
死は謎のように
いつもそばにある
ぼくは闇に溶けていく部分の
ひとつなのだろう
その冷徹な想いは
静かにあたりまえのように
からだじゅうに届いていく
反転することのない暗黒の奥底で
怜悧な星たちはみずから爆裂をつづけ
とてつもない大きな沈黙を
苛烈な天空に解き放ち
光の束とともに
ぼくを襲撃しつづける
逃れることはできない


自由詩 暗中 Copyright 足立和夫 2003-04-01 10:40:53
notebook Home