君と夏風
美味

宝探しをしようか
長い影の伸びる帰り道
長い髪を夏風に遊ばせて君は
少し目を細める微笑みで
子供みたいな提案をした
その話の続きはなく
会話はぷつりと途切れて
また君は楽しそうに風の中を泳いでいる
僕は道の片隅に咲いた
名前も知らない小さな野花を摘み取って
先を行く君に差し出した
君は一瞬、目を丸くして
でも嬉しそうに受け取った
それらしく小さな花の匂いを吸い込んだ後
あんまり良い匂いはしないね、草っぽい
と苦笑する、思わず僕も笑った
長かった影が宵と交じり合う頃
暖かな明かりが零れるどこかの窓から
カレーの匂いが漂ってくる
2人の子供が家路を目指して
はしゃぎながら駆けていく
君は電柱の下にあった花びんを見つけると
まだ大事に持っていた小さな花を
そこに挿して手を合わせた
菊の花と並んでしまうと目立たないけれど
少しも気にならなかった
それでも優しいなって言ってあげたくて
立ち上がった君の、汗ばんだ手を握った
温くなった夏風が君の長い髪をさらった






自由詩 君と夏風 Copyright 美味 2006-06-29 11:25:00
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