ぜつぼう
麻草郁

よく泣く友達がいた

映画を観ては泣き、本を読んでは泣き、泣いた話をしては泣いた
夕陽を見ては泣き、空を仰いでは泣き、泣いて泣いてまた泣いた

なぜそんなにも泣くのかと訊いたら、こう答えた
「私は世界に絶望している、だから希望を見ると泣く」
僕が「なぜ絶望するのか」と問うと

彼女は黙って

まどのそとをみた

 ぜつぼうはしのびよる
 ゆうぐれにゆっくりと
 われわれはのぞみなく
 ただよこたわってなき
 しをまつばかりだった

何が彼女を救えただろうか
新しい神様は何も教えてくれない

よく泣く友達がいた

いまはもういない


自由詩 ぜつぼう Copyright 麻草郁 2004-02-25 04:40:22
notebook Home 戻る