明日葉

相槌をうつ黒犬と
祈る老夫婦は安寧を切望


空ろな目の少女は
笑顔を背中に隠している


可笑しな家を後に
此れ因 此れ因


褐色のコートの裾
キスは欠けた鏡にうつる


9時を知らす鐘は
鍵盤を叩く細指をつぶせ


零れて落ちた爪は
其れ迄 其れ迄


最後の列はもはや
死に化粧すら道化に見え


過ぎて行く日の影
背中に背負うものは無い


底へ置いていって
其の侭 其の侭


自由詩 Copyright 明日葉 2006-06-26 16:46:41
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