閉じゆく景色へのプロローグ
霜天

知らない雨が通り過ぎて
心音だけが聞こえる部屋に
やっぱり私は取り残されている、のかもしれない

何かが去って
その声が聞こえて
足音が混ざり合って
雨の
ぱたんぱたんと
庭に置き去りのバケツの辺りに
繰り返されている


あの日は
覚えているいくつかのこと
電話の音
何度も
あちらこちらへ慌しく
行き過ぎたこと
からっぽの人
とても空が、綺麗だったこと


帰ってくるのかもしれない
雨の日のたびに
ぱたんぱたん、と
帰ってこれる、のかもしれない

それから
沈んでいった海のこと
心音だけが聞こえる部屋に
始まっていく景色が見える
閉じゆく部屋の薄い明かり
そして
あの日と同じ雨がある


自由詩 閉じゆく景色へのプロローグ Copyright 霜天 2006-06-25 00:28:56
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