風景
松本 涼
モノレールが優しく横切るその前の
鉛色の河で小船たちは寡黙に佇む
足元では何匹もの大きな蟻が
その身体と同じ程の大きさの
荷物を運びながら行き交う
小さく跳ねながら近づき
離れる二羽のすずめ
少し離れた工事現場から
響く律儀な機械音
忘れられた花壇の花は
開き過ぎた花びらをまだ
原色に染めたまま空を仰ぐ
精一杯の背伸びをして丈の低い木の
葉の匂いを嗅ぐ茶の野良猫
残りの休憩時間を気にしながらも
想いと離れた表情を休む
時計を持たない僕
目に映る全てのものが
メッセージであるなら僕は今
何を読み取れるのだろうか
風景というぬくもりの中で