謳ってる、唄ってやる
つぐこ

 指を舐めて、そっと笑う君。
くすぐったいと、言う私に対し、強引に体をくっつけて、
「愛してる」を謳ってる。
君が、「愛してる」って謳ってるのと同時に、私はその心地のよさに、ずっと酔っていたいと思った。
君は、私のマヌキュアの付いた爪を、そっと舐めて指の腹を、噛む。
痛くない、痛くない。
「痛くないよ、痛くないよ、痛く・・・・」
君が入ってきた。
濃厚なキスに身を任せ、目をつむり、その隙間にある寂しさを埋めていた。
知ってるよ、埋めたって、何にもならないことくらい。
君と一緒にいる時間が、短いことくらい、知ってるよ。
その先にあるものくらい、知ってるよ。
だけど、まだ絡み合っていたいんだよ、舌を噛まれても痛くても、血が出ても、一緒にいたいんだよ、君はまだ、私に「愛してる」を謳って、抱きしめてくれる。
私は目をつむり、「愛してる」に応える。
ねぇ、これが恋の賛美歌なんて誰かが言ったら、私は賛美歌なんかじゃないって反論するよ、ただの愛がそこにあるだけだって、反論するよ。
絡み合う舌と時間は、短いよ。
ただ、絡み合って愛しているだけなんだ、
神様、もっと時間をくださいよ。




散文(批評随筆小説等)  謳ってる、唄ってやる Copyright つぐこ 2006-06-20 13:44:40
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