バイキンの誕生日
壺内モモ子

上履きを隠され
体操服をゴミ箱に捨てられ
授業中は、後ろの席のやつらに消しゴムを当てられた
小学校5年生のバイキンは
泣いているのか笑っているのかわからない
ふにゃふにゃで、げっそりした顔で
男子たちにこう言った

「今日は私の誕生日なの」

バイキンの精一杯の言葉だった
なのに
どこからかバイキンに向かって黒板消しが飛んできた

「やめて」と言えばいいのに
「誕生日プレゼントありがとう」
とか言うからいじめられるんだよ
小学校5年生の俺らに
そんなドラマみたいな台詞言われても
ギャグにしか聞こえないって
ごめんな、ばかで

バイキンは泣いていた
ほっぺにきらりとするものが
バイキンの汚れた体を綺麗にしていくような気がして
もともとバイキンはバイキンじゃないのに
どこにでもいる普通の女子なのに
周りにいるやつらがバイキンなだけなんだ

胸がちくちく痛んだ放課後の教室
「おめでとう」と言えなかった
バイキンの誕生日


自由詩 バイキンの誕生日 Copyright 壺内モモ子 2006-06-16 03:14:31
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