幻雨
むらさき
右足の甲に落ちた水滴が
全身のわずかな震えを止めて
律儀な夜は昼となり
見知らぬ今日が明るみにでる
私の琥珀色の影は
夢遊病のような顔つきで
あなたの記憶のどこかに
住みつこうとする
六月の雨は
春の裂け目に入り込み
閉じられる
ある言葉によって
あなたの耳にも
水滴が落ちたので
傘を差してみたのだが
それは
乾くことがない
空のかなたで
雲が鳴っているので
あなたはそっと
耳をかたむけた
どこにも帰らない
一筋の光が
街を遊ぶので
私は思い出す
ある紙に泳ぐ
一匹の紙魚を
自由詩
幻雨
Copyright
むらさき
2006-06-16 01:45:19
縦