カスミソウの記憶
プル式

夢の中で私はお花を買いました。
  汚い服を着た少年は
    嬉しそうに私を見つめます。

淡い小さなカスミソウに
  水玉模様のフィルムをかけて
    少年は私に手渡します。

それは一つ一つが小さく
  一つ一つが少年の瞳の様に
    濁りの無い無垢な花でした。

私は不意に

本当に不意に

昔好きだった人の事を思い出しました。

口に出せなかった想いは

心の中で何年も彷徨い

それでもまだ

それでもまだ。

大きく花開く事の無かった恋は
  いくつもの小さな花となり
    心の中で咲いていました。

少年が売っていたのは
    忘れられた記憶でした。

次にもしも出会ったならば
    私はどの花を買うのでしょうか。



自由詩 カスミソウの記憶 Copyright プル式 2006-06-14 05:27:31
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