街の灯
atsuchan69

そびえたつ高層の夜 窓の灯がきらめく風のときめき
 シャンプーの匂い はこばれて 気づくのは、家畜の暮らし
 まやかしの自由に弄ばれて、泣いた さっきまでの記憶さえも
失う、それぞれに 無関係な窓たち ゆれる カーテン

屋上からの眺め パノラマにひろがる空しさの街
 自由になれるなら、きっと今

夜景におちてゆく僕は さまよい、
渇いた時間 つまらない言葉たちの
 とるに足りない声 幻聴のたぐい
耳にのこるのは、微かなリズム 秒針を刻む、傷と傷

自由になれるなら、きっと今 彼処では
砂つぶにまみれた舌で 誰かが真実を叫んでいる、
歴史に埋まろうとする夜 たったひとり
一切の援けもなく 痛むこころで。

 帰ってきて、と祈りつづける女がいた

 なけなしの小銭で水を買う、
 餓えに倒れんばかりの子どもがいた。

 泣き叫ぶ 年老いた母がいた。

屋上からの眺め パノラマにひろがる空しさの街
きっと僕は、誰とも無関係では居られない筈なのだ、
 このすべての哀しみと 窓たち
ゆれるカーテン 傷と傷、その痛みに。


自由詩 街の灯 Copyright atsuchan69 2006-06-14 01:18:36
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