ふたつのキ
石川和広



気になる
気にする

木になる
木にする

おなじ「キ」なのに、「木にする」はおかしい
何を木にするのだろう
あの人を木にすると魔法使い
ぼくが木になるとお友だち
知らない人を木にすると犯罪?
いやちがう
木になることはすてきなことかもしれない
山がそう云うのだろうか 云うのだろうか

そう云うと思う 思ってみる
公園に行く 友達と行くのがいいな
ぼくは友達の口の形とか手のひらとか
考えていることを気にする
気になってくる
気も木もいのちなので
ぼくの気が友達を木にする
ぼくは友達にいろんなことをたずねる

ぼくらが仲良いのかどうか
そんなこと聞けない
友達が木になってぼくは狂いそうになる
そういえばメールなんでこないんだろう
メールは一枚の葉っぱより軽い
だからつないでおかないと消えてしまいそう

風が吹く
小さな公園
ぼくは友達が手を振るのをみる
手はやはり葉っぱだ
ふたりで川の向こうへいこう
そしてきみはぼくを木にしているだろうか
それならふたりじっと立っている
朽ち果てるまで立って
この世界の行く先を見ているだろうか

ぼくは少し木になっただけなんだ
きみのことが
ちゃんと眠って
ちゃんと忘れたら
また
きみのこと正しく思い出せる気がする

きみが木になって
ちょっとしたきっかけで木になって
それからぼくは正しくまた君に会う
気になる姿で



自由詩 ふたつのキ Copyright 石川和広 2006-06-13 15:37:24
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